答志と和具の家には、家の外や内にたくさんのお札が貼ってあります。
島の人はみんなこのお札のことを「大般若さん」と呼んでいます。
「奉 轉讀大般若経 家内安全 諸災消除攸」と書かれています。
悪いものには去ってもらい、良いものに来てもらう、ということで、すべての窓や扉の横に貼るのが一般的です。また、船を持つ人は船にも貼ります。
いつ貼るの?
この大般若さん、どのタイミングで貼ると思いますか?家を建てたとき?子供が生まれたとき?お参りしたとき?
答えは、1月15日。
毎年家中のお札が新しくなるんです。
しめ縄を外すタイミングで新しいお札を貼ります。
潮音寺(ちょうおんじ)という島のお寺で、家内安全、身体健全、商売繁盛、大漁満足、無病息災などを祈祷してもらい、元旦に配られます。
お札は1種類?
お札は、各窓や扉に貼るもの、中柱に貼るもの、※神祭(じんさい)のときに配られるものの3種類があります。
※毎年2月旧正月の時期に開かれる、答志と和具で最も大切なお祭りです。このお祭りについては、実際に開かれたときにレポートする予定です。
どのようにして配られるの?
各家庭ごとに必要な数を、正月にもらうことになります。ちなみに配布のシステムは答志と和具で異なり、和具では元旦に中柱のお札と各窓に貼るお札が一度に配られますが、答志では元旦に中柱のお札、4日に各窓の札と2回に分けて配られます。
答志では、小一郎さんと呼ばれる家の方が代々お札の配布を行っています。小一郎さんが家を一軒一軒回まわり「だいはんにゃ~!」と言うと、家の人は「おおっと!」と答え、玄関へ招き入れてお札をもらいます。この「だいはんにゃ~!」に対して答える「おおっと!」の由来を聞いて回りましたが、確実にこれだ、というものは伝わっていないようです。「おお!」と答えていたのに後から「と」がついたとか、家の前を通り過ぎないように呼び止めるための「おっと!」だとか、諸説あります。和具でも以前は同じように一軒一軒配っていたそうですが、現在は漁協にいったん預けられたものを、各家庭が自ら取りに行きます。
神祭のときのお札は、潮音寺の総代(檀家のトップの人たち)や、漁協の役職持ちの人など、限られた家にしか配られません。これらの家の人は、潮音寺で大般若経の転読がされる際に(神祭の時期)お寺で直接お札を受け取ります。
こんな豆知識も
貼り替えの際にはがした古いお札は、お寺でもお焚き上げしてもらえますが、各自が持ち寄ってお焚き上げをすることも多いようです。うちの中にはなぜか、はがさずにひたすら上から重ねて貼っている窓があります。おそらく一度はがした壁や柱よりも、紙の上の方が張り付けやすいからでしょう。
ちなみに貼り付ける際に炊いたお米を糊代わりに使う、という習慣もあるようですが、今は多くの家庭が普通の糊を使っていると思われます。
答志地区にはもう一つ本誓寺(ほんせいじ)というお寺があり、潮音寺とは宗派が異なるのですが、本誓寺の檀家さんにも大般若さんは配られるそうです。宗教的な意味合いより、土地の文化として根付いているということがうかがえます。
和具地区のおばあさんたちに話を聞くと、お札は自分の家の分だけでなく、家を出て島外に暮らす息子や娘の家の分ももらう人が多いとか。でも島の文化を知らない人が家中にお札が貼ってあるのを見たらギョッとするかも…。
知れば知るほど深まる興味となぞ
島に来て強く感じるのは、お寺とか神社とか仏様をみんなとても大切にしているなあ、ということ。実家には仏壇も神棚も無かったし、祖父母の葬式も無宗教で執り行うような家庭に育った身としては、毎日お墓の掃除をするとか、ご飯の前に神棚に膳を据えるとか、祝日ごとに祈祷がされるとか、毎年お札を替えるとかの文化はとても新鮮です。
いまは興味の対象として、いろんな人に話を聞かせてもらったり、調べたりすることを楽しんでいますが、その中に入って馴染むのにはまだ少し時間がかかりそうです。
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浜口一利 (月曜日, 14 8月 2017 13:10)
家にも貼りますが、御守りとして財布に入れたり、車にも入れてあります。
いがちゃん (月曜日, 14 8月 2017 13:23)
一利さん、コメントありがとうございます。
お守りを車のキーや財布につけるという話は聞きましたが、お札も持ち歩くんですね。
山本加奈子 (火曜日, 15 8月 2017 12:35)
私はお姑さんに入院先の病院に大般若さん持ってきてって言われて持っていったよ。
いがちゃん (火曜日, 15 8月 2017 16:42)
かなこさん、コメントありがとうございます。
島の人にとっては、それだけ心の拠り所になっているってことなんですねー。