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118 島には魔除けが多い There are many types of talismans on the island

こんにちは、答志島のいがちゃんこと五十嵐ちひろです。タイトルの通り、島の魔除けについて紹介しますね。これまで、玄関に描かれたまるはちそして、各窓に貼られる大般若さんについては紹介しました。実は、その他にも2つ、どの家にもある魔除けがあります。

しめ縄

その一つがしめ縄。みなさんの家庭でも、お正月に張るあのしめ縄です。ここ答志島ではしめ縄を1年中玄関に張っておきます。実は答志島に限らず伊勢志摩地方では一般的な風習で、日本神話に関係があります。

「蘇民将来子孫家門」

武塔神(むとうしん)という神様が旅をしていたときのことです。伊勢に立ち寄り、二見にさしかかったところで日が暮れてしまったので、一晩の宿を借りようと、大きな家の戸をたたきました。家主の巨旦(こたん)は、旅人に身をやつした武塔神を神様とは気づかず、みすぼらしい身なりの旅人を見てその頼みを断ります。巨旦の兄の蘇民(そみん)は、貧しかったのですが、快く旅人を泊めて粟飯などでもてなしました。その夜、村に疫病が迫っていることを察した武塔神は、蘇民に茅の輪を作り家の周りに張るように言いました。次の朝になってみると、巨旦の家を含め村中が疫病に侵されていたのですが、蘇民の一家だけは無事だったのです。武塔神は自分が神であることを明かし、これからも茅の輪を張っていれば蘇民の子孫は災いから守られることを伝え、去って行きました。

 

諸説ありますが、神話のストーリーはこんな感じ。武塔神を助けた蘇民さんのフルネームは蘇民将来です。この蘇民さんにあやかって、災いから家を守る為に、どの家も一年中「蘇民将来子孫家門」と書かれた木札のついたしめ縄を掲げているのです。ちなみに、この武塔神という神様は牛頭天皇(ごずてんのう)つまり、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の弟の須佐之男命(スサノオノミコト)であるとされています。

しめ縄
一年中張っておくしめ縄

ついている物にも意味がある

このしめ縄についているものはそれぞれ意味がありますが、地域によってつけている物が違います。答志と和具でも違うんですよ。橙(だいだい)は「代々続く」から、ゆずり葉「次の代に譲る」から子孫繁栄の意味。ウラジロ(裏が白っぽい葉)は清廉な心を表し、紙垂(しで)と呼ばれる白い紙は、清められた場であることを示します。

 

昔ながらの方法だと、しめ縄は各家庭で作られます。藁をなって、橙や紙垂など用意した飾りをつけます。そして、蘇民将来子孫家門と書かれた板ですが、これは家を建てた大工さんから毎年贈られ、それに家長が文字を入れるのが習わしです。そして、普通に見ていたら分かりませんが、板の裏には魔除けの意味を持つ「急々如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」という文字や、海女の魔除けの印のドーマンセーマンが記されていることもあるようです。なかなか人の家のしめ縄をひっくり返して見られないので、わたしは見たことが無いですが。しかし魔除け尽くしのしめ縄ですね。

藁と老人
答志では老人会がまとめて藁を購入している

アラクサイワシ

もう一つ紹介したい魔除けは、アラクサイワシです。節分の魔除けで、一般的にはイワシの頭とヒイラギを玄関に出しますよね。答志島ではこれもやはり一年中つけたままにしておきます。もしかして単に横着なのでは?と思うこともありますが、島の人の信心深さを見ていると、昔からこだわってやっていたことなんだと分かります。

アラクサイワシと大般若札
大般若さんのすぐ脇にアラクサイワシ

二股に分かれたイマメガシの枝の先に2匹の干したアラクサイワシを丸ごと頭から刺します。これを炙ったものを、玄関と全ての窓につけるんです。その家の窓の数だけまとめて玄関につけておく家もあれば、なんか奇数がいいとかで実際の家の窓の数に関わらずとにかく13組つける家とか、出し方に違いはありますが、いずれにせよ使っている物はアラクサイワシにイマメガシと決まっています。また、答志と和具は2月3日に節分をやりますが、桃取は大晦日が節分です。

玄関のアラクサイワシ
アラクサイワシを玄関にまとめて出すと、結構目立ちます。

今の時期はアラクサイワシが新しい状態で見られますが、ずっと外に出しているうちに鳥に食べられたり、風化したりして、だんだんとそれとは分からなくなってきます。観光で来た人に街中を案内していて、これはなんですか?と聞かれてもただのY字の枝しか残っていない、ということも珍しくありません。今くらいの時期に来た人は、ぜひ家の玄関や窓をよく見てみて下さいね。

 

答志と和具では週末に節分の豆まきをしたのですが、この作法に関してはまだまだ調査中ですので、全容が見え次第紹介したいと思います。