こんにちは、答志島のいがちゃんこと五十嵐ちひろです。今年も年末年始は実家に帰らず、島におりますよ!!答志島はいつでもおいしい海の幸が食べられるのですが、この年末は何と言っても海苔です。12月に入ってから収穫が始まった黒海苔がどんどん加工され、出荷されています。
海苔の種付けの作業についてはこちら ⇒ 海苔の“種付け”
答志島の答志地区には海苔の養殖業者が10軒あり、そのうちの9軒が合同で使用してる加工施設があります。今回のブログはその施設で作られる海苔の加工工程を紹介します。(2018年12月29日時点)
養殖の海苔は、海の中に張った網にくっついた状態で育ちます。それぞれの養殖業者がその海苔を特殊な船で刈り取りし、納屋へ持って行って、脱水した後に冷凍します。その後、加工施設を使える順番が来たら、凍らせた海苔を加工施設に運ぶのです。
ではその後の工程がどうなっているのか、加工施設の中に入って見てみましょう。
まず最初に海苔を解凍する機械があります。収穫後の海苔を冷凍するのは、加工場を使う順番待ちや、生産日程を調整する意味もありますが、海苔は一度冷凍した方がおいしくなるというのも一つの理由なんだそうですよ。
解凍した後に、海苔を荒く裁断します。収穫されたときの海苔は長さ15cmくらいですが、いったんそれを半分くらいに切ります。そして、大きな異物を取り除く機械をとおします。異物と聞くと、ゴミのことかな?とわたしは思ったのですが、単純なゴミの他にも、種類の違う海藻とかも含んでいるんです。
次の機械は、先ほどよりも精密な異物除去機です。くるくる回転する円盤が6つあり、この円盤の外側に本当にせまーーーい隙間があります。髪の毛よりも薄いくらいなんですって。海苔はものすごく薄いので、この隙間を通りますが、アラメとか他の海藻はこの隙間以上の厚さがあるため、除去される、という仕組みになっています。そして、海苔はこの機械の中でもまた裁断され、もっと短くなります。
その後洗浄機を通した後に、ミンチされます。お家にある海苔を食べたときに小さなかけらを水に浸けてみてください。シート状になっている海苔が1mmくらいにカットされた海苔片がいくつもくっついてできているというのが分かると思います。これくらい小さくなるように機械で細かく刻むのです。ちなみに、こういった機械ができる以前は、当然手作業で海苔は作られていたので、まな板の上で包丁で切っていたんですよ。現在の60代、70代の人に話を聞くと「子どもの時分に朝起きると母親が海苔を切るトントントンという音が聞こえた」という話をしてくれる人が結構います。下の写真は、島の旅社の体験で手作りの海苔作り体験をしたときのものです。
ミンチされた海苔を調合機という機械に入れて、真水と混ぜます。海苔と水をどんな割合で調合するといいのかはその時々で違うので、手動で入力します。その後更にスーパーコンピューターによって、より精密な調整がされ、いよいよ四角い海苔の形になるべく次の機械に流されます。
次の機械が、この加工施設の中で一番大きな機械です。先ほど調合された海苔が、簾(す)に流し込まれ、脱水し、3時間弱かけて乾燥されます。乾燥に3時間かかると聞くと、簾に流し込まれるスピードと比べ、随分のんびりに感じますが、昔は天日干しで1日とか2日かかっていたことを考えるとかなり時間は短縮されていますね。更に、この加工施設が2014年にできるまでは各事業者ごとにすべての作業を行っており、この機械もそれぞれに持っていたのですが、1つの工程を5枚ずつ行うものでした。現在使用している機械は10連機で、1度に10枚ずつ作れるため、単純に2倍の速さで製品が作られるというわけです。
↓動画4つ目と5つ目です
でき上った海苔は、穴が空いていないか、異物が混入していないかをチェックする機械を通され、表面に見える異物は人の手で取り除きます。そして、袋詰め用に折り曲げ、重さを計り、等級を決めたら製品として完成です。
海苔は、穫れる時期によって硬さが違います。穫れはじめの今の時期の海苔はとても柔らかく薄いんです。破れやすく扱いは難しいですが、風味が良いので、そんな海苔は高級お寿司屋さんで使われることが多いです。少し育った時期の海苔は、恵方巻やコンビニのおにぎりなんかで使われるみたいです。最後の方の海苔はかなり固く、風味も落ちます。こういうものはお茶漬けやふりかけなど、海苔を細かく切って使うような製品に使われることが多いそうです。
さて、この加工施設は2014年にできた新しい施設です。それまで個々の事業所が別々に生産していた工程を1カ所で行うことによって、まず生産効率が上がりました。海苔の加工に人手が必要なくなった分、収穫から冷凍までの作業に人手が割けるようになったのです。生産量は大体以前の3倍くらいになっているそうです。また、製品の質の均一化が図れ、出荷価格が安定しました。
島の人口、漁業従事者の数が減るなか、効率向上することで、この産業を長く続けて行けるようにしたんです。これって、これからの漁業、島のためにすごく意義のあることだと思いませんか?
今日紹介した加工施設で作られる海苔は、島のお土産屋さんや旅館、鳥羽駅近くの鳥羽マルシェなどで購入できますよ!!
撮影、取材に協力いただいた海苔屋のみなさん、ありがとうございました!
コメントをお書きください
藤木時雄 (月曜日, 01 3月 2021 22:41)
私は父がアソビニンンだったので、3歳の頃から(今は68才)寿司屋の通い、海苔の美味しさを味わいました。社会人になって三河湾の一色町に
仕事に行った時に天日干しから1000万以上する機械を入れて、片方から海苔の原料を入れて反対側から板海苔が出てくる。少し悲しくなりました。伝統技術がわかっていても大量に製造して安価に作り生活するために大量生産も必要なのか。手作りしている海苔業者の奥様から高級寿司屋の納入する海苔を分けていただきました。美味しかったです。
三重のあおさも大好きです。バスのツアーにカキの食べ放題でゆくことが多いのですが、鳥羽はカキ以外にも美味しいものがあります。頑張ってほしいです。
いがちゃん (火曜日, 02 3月 2021 17:07)
藤木さん
ぜひ答志島の海苔も食べてみてください。