こんにちは、地域おこし協力隊2年生の五十嵐ちひろです。最近続けて「地域おこし協力隊を募集したいが、どうすれば応募者が集まるか」という相談を受けました。その時に答えた内容をここにも記しておきます。
国が地域おこし協力隊を8千人にする、と言っている今、どこもかしこも協力隊を募集しています。「○○県△△郡□□町観光PR担当」なんて募集でいい人材が入ってくるなんてゆめゆめ思うなよ。自分で言うのもなんですが、わたしがこれから説明する内容をせずに成功事例を作ることはよほどラッキーでないと無理です。
誰でもいいなら自分でなくてもいい
地域おこし協力隊の募集をする際に間違えがちなことが、門戸を広げれば多くの応募がくるんじゃないか、という考えです。結論を言うと、それでは人は来ません。誰にでもできる仕事だと思うと人間は「なら自分でもできるな」では無く「それなら他の人でもできるな」と考えるものなんです。「あなたの持っているスキルを活かして地域の課題解決に取り組んでください」という募集案内。「行政にしては自由度の高いことをしているな、感心感心」とはならないんですよ、だってどこも同じような募集かけているんだもん。結局行政らしく紋切り型の文句を言っているだけです。良い人材の目に留まるわけがありません。逆に聞きますが、誰でもいい募集に「それなら自分でも」と考えるような自信のない人に地域おこししてもらいたいですか?まずは真面目に、どんな人材を求めているのかを考えてください。
身近な例を挙げると、わたしと同じ鳥羽市地域おこし協力隊の佐藤くんは、動画によるPRをするために、鳥羽なかまちという市民団体の中に入って活動しています。元々鳥羽市と鳥羽なかまちが、動画制作ができる人に来てもらおう、と決めて募集していました。佐藤くんも、動画制作をする仕事を探していたので、マッチングが成立しました。動画制作の募集も、それができる人も決して多くはありません。しかし、求めていたスキルが明確であったからこそぴったりの人材を得ることができたのです。
↓佐藤くんが作成した鳥羽なかまちのイベント宣伝動画
何をして欲しいのか、を抜いたら成功は無い
地域おこし協力隊に来てもらったらどんなことをしてもらいたいですか?観光PR?移住担当?ここで考えてもらいたいのは、地域おこし協力隊にそれらのことをしてもらってどのような結果を得たいのかです。
例えば行政が「なんでもいいのであなたのできるやり方で観光PRをしてみてください」と言って、協力隊がインスタグラムのアカウントを作って毎日更新していたとしましょう。だけどそのときに行政側が感じるのって「なんか求めていたのと違う」になりがちです。そもそも求めていたものがなんだったかも分からないので、何か提示されたところで、インスタで情報発信しようが、ポスターを作ろうが、イベントを企画しようが、すべてが不正解になるに決まっているんです。だったら簡単なことでも「何をクリアすれば成功なのか」を示しておけば、「行政が求めていたことを協力隊がやった」という成功事例が作れるのです。実際にすべきことをやったならば、ミッションを与えた側も、与えられた側も満足感を得ることができ、その後の活動もよい関係で進めていくことができるでしょう。
人だけがその地域の特徴
上に挙げたことは最低限やっていただかなければならないことですが、プラスアルファとしてやったら絶対に効果があるのが、どんな人たちが受け入れるのかを伝えることです。
地域おこし協力隊になろうと思う人は、何かしら田舎らしい魅力を求めている人が多いです。募集の案内では「美しい景色」「新鮮な食材」「あたたかい人々」というような感じで地域が紹介されていますが、そんな田舎どこにでもあります。というか、田舎なんて全部そうじゃない?自分の地域だけが特別に美しかったり、食べ物が美味しかったり、と思っているならば、それは単なる驕りか、愛着が生み出すものです。環境は全くと言っていいほどアピールすべきポイントにはなりません。
ただ、そこにいる人たちは無二のものです。人といっても、地域全体の町民性みたいなものではなくて、誰がいるのか、よりパーソナルな部分が他との違いになります。例えば、以下のような募集はどうでしょうか。
A村のB地区にて地域おこし協力隊募集中!区長のCさん(65)は、普段はトマト農家をやっています。とても物知りなので、Cさんに聞けば地区の歴史のことがなんでも分かります。Cさんの親友のDさん(65)は、若いころは大阪で働いていましたが、50歳の時にA村にUターンし、農具の販売業をしています。趣味はツーリングです。Eさん(39)は・・・。こんなメンバーを中心として作られたB文化保存会の中に入って、B地区の地域活性の為に○○をしてください。
地域にどんな人がいるのかを知ることによって、活動地域をより立体的に、そして身近にとらえることができると思いませんか?そうすることによって、受け入れ地域と協力隊とのミスマッチを防ぐこともできるはずです。このような募集のPRをしている地域はほとんど無い、というのもポイントですし、仮にすべての地域がこのように募集を出したとしても、山がある、海がある、以上の違いを出すことが可能になるはずです。
※試しにJOINの地域おこし協力隊募集ページを見てみてください。募集の数が膨大すぎて、1,2件読んだだけで面倒になってきます。
とにかく真剣に具体的に考えて!
これから地域おこし協力隊を募集しようと思っている行政職員のあなた!以上3つの点をクリアした募集をすることが、まずスタート地点に立つことになると思ってください。これらのことは決してテクニック的な話ではありません。どれだけ真剣に受け入れるのかを示す物差しになるんです。どんな人材が欲しいのか、何をしてもらいたいのか、どんな人たちが受け入れるのか、これらを自信を持って提示できないのだったら、地域おこし協力隊を導入しようなんて思わないで欲しい。
Googleで地域おこし協力隊と検索したら、検索候補に「失敗」っていうのが出てくるんですよ。それだけ失敗例を作っている受け入れ自治体があるんです。わたし自身この1年半の間に約200人の協力隊または協力隊OB・OGと知り合い、それぞれのエピソードを聞く中で「これは失敗例だろう」と思う話もたくさん聞きました。そこで見えてきたのが、募集の時点での問題点です。でもこれって、行政と受け入れ団体が、ちゃんと事前に考えていれば防げた問題ばかりなんですよ。行政が失敗させたくないように、応募する側の人材だって、失敗しないような募集内容を探すはずなんです。うちに来ればよい協力隊ライフが送れますよってアピールできるくらい、受け入れ態勢を整えてください。それから募集を始めましょう!!
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