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104 不誠実な突然の全線休航 A ferry company suddenly stopped the operation

こんにちは、答志島のいがちゃんこと五十嵐ちひろです。離島在住者として他人事とは思えない本日のびっくりニュースは、九州と五島列島を結ぶ定期船運航会社のひとつである五島産業汽船が、突然全線の運航休止をしたというニュースです。

 

長崎と五島結ぶ定期船、突然運休 地元「どうしたら…」:朝日新聞デジタル

住民や旅行者への影響は?

真っ先に気になったのは、島の人の生活に支障は無いのか、ということ。調べてみると、五島産業汽船が運航していた佐世保発、長崎発の航路を運航していたのは同社を含む2社で、もう一つの九州商船は通常通り運航しています。また、博多発の航路を運航していている野母商船も通常運航しているため、近々五島列島への旅行を計画していた人も、博多発の船ならば旅程に影響はありません。

五島列島アクセス

※上の画像は五島市観光協会のページより引用

 

下の時刻表は、九州本土から五島列島に渡る船の時刻表で、赤く色を付けている部分が本来五島産業汽船が運航するはずだった便です。福江港着の船は長崎港発の便が多くあり、生活にさほど影響はなさそうですが、それでも普段あった時間に船が出ないというのは多少なりストレスを感じるはずです。ましてや、仕事や運搬物の関係で佐世保港を利用する人には大きな痛手になります。実際上五島でサーフボードの職人をしている友人も、修理品などを送るのに使っていた船が運航休止になってしまい、困っているそうです。

時刻表(佐世保港発)
時刻表(長崎港発)

何より酷いのは運航休止がいきなりだったこと。海上運送法によれば、事業の休止や廃止する場合には30日前までに国土交通大臣に届け出なければならないと規定されており、それを破った場合には100万円以下の罰金が科せられるしいのですが、その辺の事実関係は明らかにされていません。朝日新聞によれば、地元自治体である新上五島町には運休の前日に連絡が入ったそうで、あまり誠実な態度とは言えないでしょう。

最近休止、廃止した航路

最近廃止した航路には以下のようなものが挙げられますが、どれも定期船に代わる交通手段が発達したことによる要因が強いです。

 

2009年 三原観光汽船

広島県三原市に存在した海運会社で、広島県三原市と生口島を結ぶ航路を運航していた。しまなみ海道の開通、高速道路割引、燃料価格の高騰から利用者が減少し、廃止した。現在は土生汽船が同航路で定期船を運航している。

 

2010年 明石淡路フェリー

明石市と淡路島を結ぶ航路の一つ。明石海峡大橋を通る高速道路割引の影響を大きく受け、廃止。その後は淡路ジェノバラインが航路を引き継いでいる。

 

2012年 宇高国道フェリー

香川県高松市と岡山県玉野市の宇野港を結ぶ航路。高速道路の料金引き下げの影響を受け利用者が減少、減便し運航を続けていたが運航休止に至った。なお、四国フェリーは同じく経営的には厳しい状態にあるが、同航路の運航を続けている。

 

2016年 洲本線

兵庫県洲本市と沼島直接結ぶ航路。現在沼島へは淡路島を経由して行くことが可能。

 

その他には、新潟県の本土の寺泊港・佐渡島の赤泊港間を航行する佐渡汽船が、利用者の減少を理由に同航路からの撤退の方針を発表しています。(※本土と佐渡島を結ぶ別の航路は続けます)

 

地方の人口減少や、交通事情の変化などにより、民間による航路の維持は、どこも非常に厳しい状態のようです。

鳥羽の定期船は?

鳥羽市本土部と答志島を含む4つの離島を行き来する定期船は市営ですが利用者数は伸び悩んでおり、決して経営が安定しているとは言えません。代わりとなる交通手段が無いため、航路が廃止になることはまずありませんが、便数を減らすとか航行時間が短くなるとかの可能性は捨てきれないため、今回の五島産業汽船のニュースは対岸の火事とは言えないのです。

 

前述の友人に聞いてみると、地元住民の中にはこれまで五島産業汽船が航行していた航路は別の企業が引き継ぐ(引き継ぎ業務ができる状態なのかもわかりませんが)のではないか、という見方もあるようです。

 

五島産業汽船の運航休止が五島の人たちの生活や、企業の運営に与える影響が最小限にとどまることを願います。

 

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