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098 仏さんのご飯 The dishes for the spirits

こんにちは、答志島のいがちゃんこと五十嵐ちひろです。今年も帰省はせず、盆中島におります。お盆の答志島は、一年中で最も賑わう時期のひとつ。島を出た人たちがみんな一斉に帰ってきます。親戚で集まったり、孫が訪ねて来たり、プチ同窓会があったりと忙しくてもしなければならないのが仏さんへのお供え。

盆のお供え物。
玄関横の餓鬼棚。奥にあるのは仏花のしきび。箸は麻がらです。砂利を敷いた上に大きな石を置き、その上に膳を用意します。

13日から16日の間供えるものは、献立が決まっています。そして、その決まった膳を1日2回仏壇と家の玄関前に供えます。仏壇はもちろんご先祖様へのお供えで、玄関前は帰る家が無く彷徨う霊への施しです。そして多くの家では神棚にも供えます。この島はゴリゴリの神仏習合。

 

この膳の献立は大まかに分けて集落ごとに違いますので、今回は和具の献立を紹介します。これはわたしの情報筋から聞いたその家のやり方を元に書き起こしていますので、同じ和具の町内の人からは異論が出るかも知れません。

盆のお供え物。
お地蔵さんのいるところには周囲の家がお供えをします。

お供えの献立

13日

朝:団子

昼:おはぎ、アラメとなすと油揚げの煮物

盆のお供え物。
13日の膳。朝と昼の分を一度に出す家庭もあります。
盆のお供え物。
これは13日に答志地区で見かけたお供え。だんご、煮物、白ご飯、たくあん。

14日

朝:白ご飯、カボチャの煮物

昼:ミル(海藻)とすり胡麻の酢の物、アラメ・油揚げ・なす・京菜・すり胡麻の酢の物

盆のお供え物。
手前がアラメ・油揚げ・なす・京菜・すり胡麻の酢の物で、奥がミル(海藻)とすり胡麻の酢の物

15日

朝:団子、あずきご飯、うり漬け、七色そうめん(そうめんに下記の煮しめをのせたもの)

昼:白ご飯、煮しめ(枝豆・ごぼう・干ししいたけ・かんぴょう・高野豆腐・油揚げ)、とうがんのみそ汁

盆のお供え物。
うりの漬物、煮しめ、あずきご飯、団子。

13~15日の間は、ご先祖様が帰ってきているのでいわゆる精進料理です。生臭物はご法度なため、煮物や汁物にはダシは使わないことになっています。昼の膳を下げた後は、次の朝まで湯のみをひっくり返して置いておきます。

盆のお供え物。
16時くらいにはもうどの家もこんな状態。

16日

朝:白ご飯、大根葉、とうがんのみそ汁

精霊舟を流した後:あずきご飯、生臭物(ちりめんを使うことが多い)※これらは仏壇と神棚、船、井戸神様などに供え、玄関先には供えません。

 

盆のお供え物。
白ご飯に大根葉。ここの家はみそ汁は無しですね。

これ以外に常にお茶を用意しておき、スイカも13日の朝から15日の昼の膳を下げるまで供えておきます。ちなみに、下げるタイミングも決まっており、必ずしもすべての品を取り換えるわけではありません。例えば14日のカボチャの煮物は昼前に下げますが、白ご飯はそのまま置いておく、とか。あまりに煩雑かつ家庭によってやり方が異なりそうなので、詳しくは書きません。

その他の風習

玄関の前のお供え物は、済んだら膳の脇に捨てて行きます。虫や動物が寄って来たり匂いが出たりするのを避けるために最近はビニール袋を用意しておき、その中に入れていっています。

 

この膳はお供え用に作るだけで、生きた人たちは普段通りに好きなものを食べます。食事前は普段の食事の用意で忙しい為、できるだけ手の空いた時間に供えてしまいたい。だけど、あんまり遅れるのもいやなのが人間心理。隣近所の玄関を見てみて、次の膳が出ているのを確認して自分の家の膳も換える、というようにしたりするみたいです。

盆のお供え物。
仏壇へのお供えはこんな感じ。左の棒は杖。落雁、野菜のセットもある。

これらのお供えに使った食器類は、16日の朝の膳を下げた後に浜で洗います。仏さんの使ったものなので、塩で清めるのです。港にみんなで並んで洗い物している様子はなかなか見応えがありますよ。

お供えに使ったものを海で洗う。
前日のうちにおけとつるべを出しておきます。

今年は火入れ(みんなで一斉にお墓参りをすること。自分の家の墓だけでなく、親戚や朋輩、寝屋親など複数の墓を参る。詳しくはinstagramの説明文参照。)も簡易化されたし、和具コミュニティセンターでの大施餓鬼も無くなったし、だんだんと盆行事も省略が進んでいます。このお供え物もあと何年後まで見られるでしょうか。わたし自身は見ているばかりで、お盆にしなければならないことと言えば夜の盆踊りに参加するくらいのものです。なので、無責任に「こういう伝統文化は受け継いで欲しい!!」とは言えません。まだ存在している現在、こうやって発信し、この先どのように変化していくのかを見ていきたいと思います。

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