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089 田舎暮らしが悪夢になるとき When living in rural area becomes a nightmare

恐怖の実話!悪夢と化した「夢の田舎暮らし」~場所によってはこんなにヤバい「人間関係」~というセンセーショナルなタイトルの記事がSNSでシェアされていました。ああ、また田舎暮らしに関するネガティブな記事がバズっちゃったな、と思いました。7月7日に公開されたこの記事は、10日正午の時点で東洋経済オンラインの週間閲覧数1位になっています。

 

この記事は、東京から山梨県内のとある景色の素晴らしい集落へ移住したものの、田舎の信じられないような人間関係に辟易して、別の地域へ転住した女性へのインタビュー記事です。

 

この女性が移住した地域と、答志島和具地区での移住生活を比較してみようと思います。まずぜひ、前述の記事を読んでみてください。

 

最初に起こった問題として、市指定の有料ゴミ袋を使っているのに、地域のゴミ集積所が使用できなかった、ということが紹介されています。記事についたコメントやSNSの反応を見ると、地方では結構よくある話みたい。

 

ゴミ問題は一例で、結局ここで問題なのは、①地域の人たちがヨソモノは絶対に受け入れないという姿勢をとっていることと②自治体が移住者受け入れのためにすべき調整を怠っているということです。

 

最初の問題点の①地域の人たちがヨソモノは絶対に受け入れないという姿勢をとっていることですが、結局は組長さんの考えに組の者たちは右ならえしているだけなんですね。右ならえする理由は、自分自身も同じ気持ちだとか、村八分がこわいとか人それぞれあると思うけど、まあムラ全体で共通認識はできているわけです。

リサイクルゴミの回収
リサイクルゴミの回収の様子。ワイワイやって楽しいからわたしは好き。

一方和具の場合は、いわゆるトップである町内会長および副会長が移住者を受け入れましょう、と言っているのです。地域の人たちはそれに右ならえ、というよりは多分多くの人は最初は無関心だったんじゃないかな、と想像します。和具の人ってそういうところあるので。

 

実際わたしが来て、その後に漁師見習いの若者とか、離島留学の母子とかが来て、きっとなんかいいな、って思う人が出てきたんでしょうね。移住者歓迎、よくしてあげよう、って気持ちが広がっているような気がします。だから、ゴミ出しさせてもらえないとか、ヨソモノ故に虐げられるっていうことは、ここではまず起こり得ません。

 

ゴミ出しに関する記事はこちら ⇒ 祭り?戦い?島のリサイクル

小学生の行進
文章長いです。子どもの写真でなごんでください。(稚魚稚貝パレード)

ひょっとすると「よその人を入れるなんて」って思った人ももしかしたらいるかも知れません。実際会ったことないんで分からないけど。でも結局数の力(この場合無関心の方かな)と、地域の有力者の方針には敵わないので、仮にあったとしても表面化しなかったのでしょう。

 

そう考えるとまず最初の集落のトップの方針が真逆だったら、真逆のことが起こるポテンシャルはこの和具にもあるのかな、と思います。でもだとしたら、そんな地域に移住する方が、わたしの場合は地域おこし協力隊、つまり市役所の募集ありきで島へ移住しているので、そんな地域に移住させようとする方が悪くない?という話になり、先ほどの問題点②自治体が移住者受け入れのためにすべき調整を怠っているに繋がるわけなんですね。

海鮮丼
文章長いです。美味しいものの写真でなごんでください。(かねきんの海鮮丼)

ゴミ集積所が使えないことに関して女性が市役所に訴えても、何の対処もしてもらえなかったと言います。いや、対処はしているんですよね。同じように集積所の使用を拒否された移住者向けに役所の敷地内にゴミ集積所を設けるという形で。つまり、実質地域による村八分を自治体が容認しているということなんですね。もう本当、なんでそんな地域への移住をすすめた?

 

では鳥羽市役所はどうか、というと2016年に移住・定住の専門部署を設けて都市部での移住相談会への参加や市内での移住体験ツアーなどをしていますが、積極的に移住を推し進めているのは、移住・定住のモデル地域の3地域(鳥羽なかまち、石鏡町、答志和具町)のみです。(もちろん移住者の希望があれば他の地域での家探し、起業のサポートも行っていますが、いわゆる閉鎖的な集落はよほど縁が無い限りは避け、住宅街や市中心部への移住をすすめています。)

 

結局地元の人がヨソモノを求めていない地域に無理に移住者を入れても、何も良いことがないというのは、他地域の事例を見るまでも無く当たり前のことだからです。

記事中で次に挙げられた例は、保護者会で作られる「厄介者リスト」のこと。想像ですが、この地域ではまだ地元生まれ地元育ちの人たちが多く、子どもの頃からの、もっと言えば親やその上の世代から引き継いだヒエラルキーがそのまま生きているのではないでしょうか。その中によそから来た夫婦、よそからお嫁に来た奥さんを組み込むので元々いる人が後から入って来た人を好きなように采配できるのでしょう。

 

一方和具の場合は、男性はほぼ全員が地元生まれ地元育ちですが、女性はよそから嫁いできた人が昔から結構な数います。人口減少の一途をたどっている現在、昔からのヒエラルキーを引き継ぐほど、地元出身者の数がおりません。なので、地元出身者も、よそからお嫁に来た人も移住者も割とフラットに付き合えるのかな、と思います。そもそも和具の人たちが、この記事に書かれている地域の人たちのように陰湿でないのが大前提ですが。

 

他にも洗濯物や、車の停めてある無しを毎日チェックされているとか、都市部ではしなくていい苦労に悩まされた経験が語られています。わたしも一度「あんたパンツは洗濯せんのか?外に干しとらんけど?」と言われて「うわ、キモ」と思ったので「そうやって見に来る人がいるから表に干さないんですけど?」と答えた経験があるし、普段乗っているピンクの自転車を停めている場所で居場所をつかまれるなんてことももはや日常ですね。

アジサイ
文章長いです。アジサイの写真でなごんでください。(三重県御浜町)

この記事を読んだ多くの都市部在住者、特にムラ社会の強固な地方出身者なんかは「ほら、だから田舎は嫌なんだ」または、「こんなこともあるのに田舎暮らしがしたいなんて理解できねーな」などと感じたと思います。地方創生に懐疑的な層は「こんな事例がゴロゴロ転がっているのに、田舎暮らし礼讃もいい加減にしてよね」と思ったことでしょう。実際に「こんな地域なら過疎化して当然、そのまま消滅するべき」とのコメントも見かけました。

 

確かに、田舎には都市には無い苦労が多くありますし、移住によってこの記事のようなトンデモ案件をつかまされることもあります。だけど、当然ですが、すべての地域がそうじゃない。わたしが住んでいる答志島の和具も、そうじゃない地域のうちの一つです。今後より多くの移住者を受け入れるとなったら医療や教育、仕事の問題など、ここに挙げたのとはまた違う問題を抱えていますが、少なくともこんなつまらない人間関係で悩まなければならない地域ではないです。

 

この記事は読み物としては面白いです。しかし今あなたが移住を検討していて、この記事を自分ごととしてとらえているならば、田舎暮らし一般の悪い部分のみを真に受けるのではなく、対象地域をよりしっかり下調べをすること、自分のインスピレーションを大事にすることをお勧めします。